最近、自廃した所長と話す機会があった。
A 所長曰く。「補助が半額になったので、これ以上続けたら借金まみれになる。このタイミングで辞められてよかった。赤字にならなければもっと続けたかった。」
本社担当員は別の見方をする。「彼は人をたくさん抱えて、人件費を削減できなかった。」という。
推測されるのは、補助漬けにして走らされた結果だ。
B 所長曰く。「前から銀行の融資を受けていた。実売部数と折込が徐々に減り社員も減らしたが、限度まで来てしまった。このまま続けるより、今やめて後任所長が店舗を借りてくれれば、銀行の返済に充てられる。今は銀行に返済猶予してもらっているので、とりあえず今期は黒字だが、このまま資金繰りに苦労するならもうやめたいと思った。」
B 所長の区域は世帯減の地区。
他にも数人の所長が辞めている。中には数年前に局長賞を獲った所長もいる。その後に隣の店を兼営したが、4 か月前兼営店を辞め、すぐ本店もやめた。
担当員の説明では「年老いた親の世話をしなければならなくなったのでやめた。」というが、別の社の担当員はベタSで本紙を維持していたらしく、ある社は所長交代を機に別の系統に紙を預ける。」と言っている。
数年前には本社がみんなで持ち上げた所長を、手のひらを返したように評価を変える。本社の判断は間違っていないという姿勢である。
ある中堅所長からは、「このまま店を続けていいのでしょうか?」という質問も受ける。
「今後、続けても借金まみれになるくらいなら、やめた方がいいのではないか。」と答えざるを得ない。
止めの4割は無読になっている。それほどに新聞市場は急速に縮小している。無理やり無読になった読者を起しても、また無読になる。数か月のカードを上げるだけ店の手間と経費がかかる状態だ。
取引制度は過去に、ある程度の折込収入を見込んで作られているが、その制度がもはや時代に合っていない。その時々の状況に合わせて変えてきたが、本社にはその発想もなく従来の現場対応で処理している。
予備紙も2年前から少しずつ担当員を通して整理しているようだが、まだ自由増減ではなく余っているところは多い。
「目標月には、全店で前年比何%未満にしてください。」などと担当員がいうほど、本社幹部の現場感覚がマヒしている。日本は共産党が仕切る中国ではないのだ。
2006年に本社が取り紙をロックしてから、多くの所長が替わり店数も減った。若い所長も増えたがコロナの流行で折込が一時激減し借金が増えている。
折込は用紙代の値上げで昨年から急激に減ってきた。最近の数年間では新たに独立する所長はほとんどいない。
本社は人件費を減らせというが、人出不足に加え、自ら常配している所長や自分の給料が取れないので、店に貸付をしている所長が増えている。
部数も利益も減っているので、所長の顔は暗く、会合が終わると静かに帰っていく。